カナダに来るまで、私自身はカナダの医療制度についてほとんど知りませんでした。
転機になったのは、2017年のワーホリ時代のこと。
当時アルバータ州バンフに住んでいた友人が、突然体調を崩し緊急入院・手術をすることになりました。
それは、決して軽い病気ではありませんでした。
当時の私が驚いたのは、入院から手術まで、すべてほぼ無料だったということ。
「カナダの保険制度ってすごいんだ」と、その時初めて実感しました。
そして2024年に永住権でアルバータ州に移住し、自分でAHCIP(アルバータ州の公的医療保険)を申請する機会が来ました。
手続きはとてもシンプルで、「これで本当にいいの?」と拍子抜けするくらいでした。
この記事では、カナダ・アルバータ州の医療制度について、日本との違いも交えながらわかりやすくまとめていきます。
ワーホリや留学を考えている方にも、永住・移住を考えている方にも参考になれば嬉しいです。
・AHCIP(アルバータ州の公的医療保険)の仕組みと申請方法
・保険が効くもの・効かないもの
・病院のかかり方と待ち時間の実態
・歯科・眼科・処方箋はどうなる?
・緊急時の対応方法
1. カナダの医療制度「メディケア」とは?

カナダには、日本の国民健康保険に相当する公的医療保険制度があります。
これは「メディケア(Medicare)」と呼ばれ、税金によって運営されています。
原則として、対象者であれば医療費の自己負担はゼロです。
日本と大きく異なる点は、制度が州ごとに管理されていることです。
日本では国が一律で制度を管理していますが、カナダでは各州が独自に運営しているため、住んでいる州によって受けられるサービスや加入条件が少し異なります。
アルバータ州の場合、この公的医療保険はAHCIP(Alberta Health Care Insurance Plan)と呼ばれています。
日本との主な違い
| 日本 | カナダ(アルバータ州) | |
|---|---|---|
| 医療費の自己負担 | 原則3割 | 原則0割(無料) |
| 歯科・眼科 | 一部保険適用 | 原則自己負担 |
| 処方箋 | 一部保険適用 | 原則自己負担 |
| 妊娠・出産 | 保険適用外 | 保険適用 |
| 管理 | 国が一律管理 | 州ごとに異なる |
医療費が原則無料というのはとても魅力的ですが、歯科・眼科・処方箋は対象外という点は日本と大きく異なります。
この点については後ほど詳しく説明します。
2. AHCIPの仕組みと申請方法
対象者は誰?
AHCIPに加入できるのは、アルバータ州に居住する以下の方です。
- カナダ永住者・市民権保持者
- 就労ビザ保持者(条件あり):Work Permit
- 一部の学生ビザ保持者:Student Permit
※ワーキングホリデービザ(IEC)については、制度が変わる可能性があります。
2026年初頭に一時的に対象外となりましたが、その後撤回されました。
最新情報は必ずAHCIPの公式サイトで確認することをおすすめします。
申請方法
申請はとてもシンプルです。
私自身も「これで本当にいいの?」と拍子抜けするくらい簡単でした。
- AHCIPの申請書類を記入する
- 必要書類(永住権カード・パスポートなど)を用意する
- 最寄りのレジストリ(Registry)オフィスに持参して提出する
- 後日、郵便でヘルスカード(Alberta Health Card)が届く
申請自体は無料で、処理には最大5日ほどかかります。
要注意!3ヶ月の待機期間
アルバータ州に移住してからAHCIPを申請した場合、居住開始から3ヶ月間は待機期間があります。
この間は保険が適用されないため、民間保険でカバーするか、医療費は自己負担となります。
例えば7月12日にアルバータ州に移住した場合、保険の適用開始は10月1日からになります。
ヘルスカード(Alberta Health Card)の使い方
病院や診察を受ける際は、ヘルスカードと写真付きID(運転免許証など)を提示するだけでOKです。
カードは常に持ち歩くようにしましょう。
3. AHCIPで保険が効くもの・効かないもの
AHCIPは医療費が原則無料と聞くと、すべてカバーされるように思えますが、実際には対象外の医療もたくさんあります。
渡航前にしっかり把握しておきましょう。
保険が効くもの(無料)
- 医師による診察(ファミリードクター・専門医)
- 入院・手術
- 緊急医療サービス
- 妊娠・出産
- 入院中の処方薬
- ほとんどの検査(血液検査・レントゲンなど)
- 18歳未満・65歳以上の眼科検診(年1回)
保険が効かないもの(自己負担)
- 歯科治療(虫歯・クリーニング・抜歯など日常的な歯科診療は全額自己負担)
- 眼科(19〜64歳の定期検診は原則自己負担)
- 処方箋・薬代(入院中以外は全額自己負担)
- リハビリ・理学療法
- カイロプラクティック・マッサージ・鍼治療などの代替医療
- 救急車(一部自己負担が発生する場合あり)
特に日本人が驚くのが歯科と処方箋が全額自己負担という点です。
日本では歯科も保険が一部効きますが、カナダでは民間保険がないと歯の治療だけで数万円〜数十万円かかることもあります。
民間保険(Private insurance)の活用を
歯科・眼科・処方箋をカバーするために、多くの在住者が民間の補足保険に加入しています。
代表的なものとしてはAlberta Blue Crossがあり、職場の福利厚生(Benefit)として提供されている場合もあります。
カナダで長期生活するなら、民間保険の加入も検討しましょう。

職場の福利厚生で保険に入れるのは、非常にラッキーです
仕事を探す際に、併せて確認してみましょう
4. 病院のかかり方

カナダの病院のかかり方は、日本とかなり異なります。
「具合が悪いから病院へ」と気軽に行けないのがカナダの医療事情です。
渡航前にしっかり把握しておきましょう。
ファミリードクター(かかりつけ医)制度
カナダでは、まずファミリードクター(Family doctor)に相談するのが基本です。
ファミリードクターは幅広い医療知識を持ち、患者の健康状態を継続して管理してくれます。
日本では体調が悪ければ直接、皮膚科や耳鼻科などの専門医を受診できますが、カナダではファミリードクターの紹介状がなければ専門医の受診ができません。
ただし、ファミリードクターを見つけること自体が難しいのが現状です。
医師の数が少なく、新規患者を受け付けていないケースも多いため、カナダに来たらまず早めにファミリードクター探しを始めることをおすすめします。
ウォークインクリニック(Walk-in clinic)とは
ファミリードクターがいない場合や、予約が取れない時に便利なのがウォークインクリニックです。
街中やショッピングモール内にあり、予約なしで受診できます。
ただし設備が簡易的なことが多く、レントゲンや血液検査などができない場合もあります。
また、近年はオンライン予約制を導入しているクリニックも増えているので、事前に確認するのがおすすめです。
専門医の受診には紹介状が必要
皮膚科・眼科・整形外科などの専門医を受診するには、必ずファミリードクターからの紹介状が必要です。
しかも専門医の予約は数週間〜数ヶ月待ちになることも珍しくありません。
日本のように「今日気になるから今日行く」というわけにはいかないのがカナダの医療の現実です。
待ち時間が長い問題
カナダの医療で最も驚くのが、待ち時間の長さです。
救急外来(ER)でも、症状によって診察の優先順位が決められるトリアージ(Triage)制度が採用されているため、緊急性が低いと判断された場合は数時間待つこともあります。
また、CTやMRIなどの検査機器の数が日本に比べて極端に少なく、検査の予約が数週間〜数ヶ月先になることも日常的です。
困ったときは「811」に電話
体調が心配だけど病院に行くほどではないかも…という時は、811に電話すると無料で24時間、看護師などの医療専門家に相談できます。
英語対応ですが、通訳サービスも利用可能です。
5. 緊急時の対応

カナダで緊急事態が起きた時、日本と同じ感覚で動いてしまうと戸惑うことがあります。
事前に知っておくだけで、いざという時に冷静に対処できます。
救急車は「911」
生命に関わる緊急事態が発生した場合は、迷わず911に電話して救急車を呼びましょう。
日本の119番に相当します。英語での対応となりますが、通訳サービスも利用可能です。
ただし注意が必要なのは、救急車の利用には費用がかかる場合があるという点です。
AHCIPに加入していても、救急車の利用料金の一部は自己負担となるケースがあります。
自力で救急外来(ER)に行ける状況であれば、車やタクシーで向かう方が費用を抑えられます。
ER(救急外来)の仕組み
緊急時はウォークインクリニックの診療時間外でも、公立総合病院の救急外来(Emergency Room / ER)を予約なしで受診できます。
AHCIPのヘルスカードを持参すれば、医療費は原則無料です。
トリアージ制度に注意
ERでは、前述した通りトリアージ(Triage)制度が採用されています。
これは症状の深刻さによって診察の優先順位を決める仕組みで、命に関わる症状の患者が優先されます。
そのため、緊急性が低いと判断された場合は、ERに行っても数時間以上待つことが珍しくありません。
日本のように「順番に診てもらえる」という感覚とは大きく異なります。
6. 薬局・処方箋の仕組み
日本では薬局で市販薬を気軽に買えますし、処方箋薬も保険が一部効きます。
しかし、カナダでは薬に関する仕組みが少し異なります。
処方箋薬は原則自己負担
AHCIPに加入していても、入院中以外の処方箋薬は全額自己負担です。
これは日本と大きく異なる点で、薬代が思ったより高くて驚く方も多いです。
持病があって定期的に薬が必要な方は、民間の補足保険に加入しておくことを強くおすすめします。
薬局(Pharmacy)の使い方

カナダの薬局は、Shoppers Drug MartやRexallなどのチェーン薬局が一般的です。
日本のドラッグストアに似た雰囲気で、市販薬や日用品も販売しています。
処方箋薬を受け取る流れはこうです:
- ファミリードクター、またはウォークインクリニックで診察を受ける
- 医師から処方箋(Prescription)を受け取る
- 薬局に処方箋を持参する
- 薬剤師が薬を準備してくれる
- 費用を支払う(民間保険があれば一部カバーされる)
市販薬について
風邪薬や痛み止めなどの市販薬(OTC薬)は、薬局やスーパーで購入できます。
ただし日本と成分や商品名が異なるため、最初は薬剤師に相談するのがおすすめです。
薬剤師に気軽に相談を
カナダでは薬剤師(Pharmacist)の役割がとても大きく、軽い症状であれば薬剤師に直接相談することもできます。
ファミリードクターの予約が取れない時の強い味方です。
7. 歯科・眼科はどうする?
カナダ在住の日本人が最も驚くポイントのひとつが、歯科と眼科の費用です。
日本では保険が一部効く治療も、カナダでは基本的に全額自己負担となります。
歯科は全額自己負担
AHCIPでは、病院内で行われた緊急の歯科手術など一部の例外を除き、日常的な歯科治療は一切保険が効きません。
虫歯の治療・クリーニング・抜歯・矯正など、すべて自己負担です。
カナダの歯科治療費は非常に高額で、例えば:
- 定期検診・クリーニング:$150〜$300程度
- 虫歯の治療(1本):$200〜$400程度
- 抜歯:$300〜$500程度
日本と比べると、数倍の費用がかかることも珍しくありません。
定期的に歯科に通う習慣がある方は、民間の歯科保険への加入が必須です。
眼科も基本的に自己負担
AHCIPで眼科がカバーされるのは、18歳未満と65歳以上の定期検診(年1回)のみです。
19〜64歳の定期的な視力検査は自己負担となります。
ただし、緑内障や糖尿病など医療的に必要と診断された場合は例外的にカバーされます。
コンタクトレンズや眼鏡の費用は、もちろん全額自己負担です。
まとめ
カナダ・アルバータ州の医療制度について、ざっとまとめると以下のようになります。
カナダの医療で知っておくべきポイント
- AHCIPに加入すれば、医師の診察や入院・手術は原則無料
- 歯科・眼科・処方箋は自己負担のため、民間保険の加入を検討する
- ワーホリビザでの加入可否は制度が変わる可能性があるため、最新情報を必ず確認する
- ファミリードクターは早めに探しておく
- 緊急時は911、医療相談は811
実際に住んでみて感じること
私自身はカナダに来てから、幸いまだ大きな病気や怪我をしたことがありません。
ただ、2017年のワーホリ時代に友人が緊急入院・手術をした際、費用がほぼかからなかったという経験から、いざという時のAHCIPの心強さは実感しています。
一方で、歯科や処方箋が全額自己負担という点は、日本の医療制度に慣れた身としては正直驚きました。
カナダでの生活を長く考えるなら、民間保険への加入は早めに検討することをおすすめします。
また「すぐに病院に行けない」「専門医の予約が数ヶ月待ち」という状況は、日本の感覚からするとかなり不便に感じるかもしれません。
でも逆に言えば、日頃から健康に気をつけて生活することの大切さを改めて実感できる環境でもあります。
カナダでの生活を考えている方の参考に、少しでもなれば嬉しいです。
※この記事の情報は執筆時点(2026年4月時点)のものです。
制度は変更される場合があるため、最新情報は必ずAHCIPの公式サイト(alberta.ca/ahcip)でご確認ください。

